企業型確定拠出年金を導入している会社を退職すると年金はどうなる?
企業型確定拠出年金(「企業型 DC」とか「企業型 401k」とも呼ばれます。以下では「企業型 DC」と呼びます)を導入している会社を退職すると、その年金はどうなってしまうのでしょうか。
年金がどうなるか、何をしなければならないのかは、退職後の状態によって変わります。ここでは、退職後に独立開業した場合に絞って何をすべきか確認します(他のパターンについては、転退職に伴う年金資産移換等早見表が参考になります)。
独立開業する場合、年金については国民年金の第1号被保険者になります。この場合、企業型 DC で運用していた商品(投資信託や定期預金など)をいったん現金化し、個人型確定拠出年金(以下では「iDeCo」と呼びます)に移管することができます。以下では移管を前提に手続等をみていきますが、移管手続をしなかった場合にどうなるかを先に確認しておきます。
企業型 DC から iDeCo に移管しないとどうなる?
退職により企業型 DC の加入資格を失ってから6か月以内に iDeCo への移管手続を行わないと、その資産は現金化されたうえで国民年金基金連合会に自動移換されます。これまでの資産がゼロになってしまうわけではありませんが、自動移管時に4,338円(特定運営管理機関分:3,300円、 国民年金基金連合会分:1,048円)の手数料がかかるほか、毎月52円の管理手数料が移管された資産から差し引かれます。
自動移管された資産は運用されないため、管理手数料の分だけ残高が減っていきますし、後から気付いて移管しようとすると、所定の移管手数料を取られる(手数料の一覧はこちら)ので、デメリットしかありません。また、自動移管期間中は老齢給付金の受給要件となる通算加入者等期間に算入されないため、企業型 DC の加入者期間が10年未満のまま60歳を迎えると、老齢給付金の支給が1~5年遅れることになります(確定拠出年金制度の概要の「(4) 給付」の項目参照)。
以上から、できるだけ早く iDeCo に移管すべきということになります。現在は、iDeCo の加入者になった場合には、企業型 DC や国民年金基金連合会から iDeCo への移管手続が自動で行われるようになったようですが、どちらにしても、iDeCo の加入者にならないことには自動移管もされないので、まずは iDeCo の加入者になるところから始めましょう。
iDeCo の加入者になるには?
iDeCo の加入者になるには、運営管理機関に加入申込をする必要があります。都市銀行、地方銀行、ゆうちょ銀行、証券会社、保険会社などが運営管理機関になっているので、その中から比較して申し込めばよいと思います(運営管理機関はこちらから検索することができます)。
比較の際に優先すべきポイントは、コストの安さだと思います。iDeCo は、原則として60歳まで現金化することができません。長期投資の場合、運用時の費用が馬鹿にならない(特に定期預金のような低リスク資産で運用しようとした場合)ので、運営管理手数料や運用できる商品の運用コスト(信託報酬)をまずみるべきでしょう。
企業型 DC の場合には運営管理機関を選べないので、「この投資信託で運用したい」と思っても、運営管理機関が取り扱っていなければ運用することができませんが、iDeCo の場合、自分で運営管理機関を選ぶことができるので、気になる金融商品があるのであれば、それを基準に運営管理機関を探してみるのもよいかもしれません。投資信託の検索には、Yahoo! ファイナンスなどを使うと便利です。
加入者? 運用指図者?
iDeCo との関わり方には、毎月掛金を拠出していく加入者と、掛金を拠出せず現在保有している資産を運用するだけの運用指図者の2種類があります。毎月の掛金の最低額は5,000円なので、独立直後の身には、なかなか厳しいかもしれません。そんなときはとりあえず運用指図者になっておいて、余裕ができてから加入者に変更するということもできます。ゼロから iDeCo を始めるのと違って、企業型 DC で運用していた資産があるので、運用だけでもある程度資産を増やすことができます。
とりあえず運用指図者になっておく場合には、運営管理機関を通じて個人別管理資産移換依頼書(記入例)(+配分指定書) を提出すればOKです(詳しくは運用管理機関にご確認ください)。
運用指図者の期間は退職所得控除額を計算する際の「勤続年数」に含めることができないので、60歳を迎えて年金が受け取れるようになったときに、手取りの額が減る可能性があります(年金を一時金で受け取る場合)。ただ、国民年金基金連合会に自動移管されたときと異なり、運用指図者の期間は通算加入者等期間には算入されるので、年金の受け取り年齢が遅くなることはありません。
掛金を支払う余裕がない場合には仕方ないですが、掛金を支払うことで受けられる所得控除が受けられなくなることも運用指図者のデメリットといえます。
ちなみに、国民年金の免除を受けている場合には、iDeCo の加入者となる条件を満たさないので、この場合も運用指図者になります。
今回のまとめ
- 企業型 DC に加入していた人が退職して独立する場合には、企業型 DC の資産を iDeCo に移管する必要がある
- 移管先の選択肢はたくさんあるので、情報を集めて比較する。比較のポイントはコスト
- 毎月の掛金を支払う余裕がないときは、とりあえず運用指図者になる手も。ただし、得られるメリットも少なめ
おまけ
移管先を SBI 証券に決めたのであれば、A8.net
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