任意継続と国民健康保険、どちらが得?
会社を辞めて独立する場合、これまで入っていた健康保険を任意継続するか、国民健康保険に入るか決めなければなりません。
任意継続する場合、資格喪失日(退職日の翌日)から20日以内に手続をしなければならない(健康保険法37条)ので、思ったよりも時間がありません。国民健康保険のほうも、資格取得日(=これまでの健康保険の資格喪失日)から14日以内に資格取得の届出をしなければならないとされているので(国民健康保険法施行規則3条)、基本的にはそれまでにどちらにするか決めて届け出る必要があります。
どちらを選ぶかは、保険料などを比較して決めることになります。ただ、保険料については、これまでどんな健康保険に加入していたのか、現在住んでいる市町村がどこなのかによっても変わりますし、家族構成によっても変わるので、一概に「〇〇が得!」と決められません。この記事では、私がどちらが得になるのかを検討していたときに、気づいたことをまとめておきます。
以下では、これまで協会けんぽ(全国健康保険協会)に加入していたことを前提として書いていきますので、他の健康保険組合の健康保険に加入していた方はご注意ください。
任意継続の保険料は2年間固定で途中でやめられない
任意継続の保険料は、退職時の標準報酬月額を基準として計算されます(詳細は後述)。そして、任意継続の加入期間は2年間で、「国民健康保険に加入した」「家族の健康保険に被扶養者として加入した」という理由ではやめることができません。そして、任意継続期間中は保険料は原則として同額なので、任意継続に移行した時の保険料を2年間支払い続けることになります。
健康保険料が固定されるということは、「独立してから収入が増えても安い保険料で健康保険を利用できる」とも考えられますし、逆に「独立して収入が減っても保険料が高いまま」ということにもなるので、どちらを選ぶにしても見通しを持って決める必要があります。
任意継続の保険料は退職時の標準報酬月額を基準として計算される(ただし上限あり)
任意継続の保険料は退職時の標準報酬月額を基準に決められます。ただし上限があり、月額30万円を超えている人も30万円として扱われます。また、協会けんぽの保険料は都道府県によって多少異なりますが、任意継続の場合は加入者の居住地の都道府県の保険料が適用されます。例えば、千葉県在住で東京都で勤務していた人は、任意継続になることで、若干保険料率が下がります。
会社に勤めているときは、保険料は労使折半ですが、任意継続の場合、保険料は加入者のみで支払う必要があります。上記のように、保険料の算出方法が若干異なるので単純な比較はできませんが、保険料の支払額は在職時のおよそ2倍になると考えておいてよいでしょう。
任意継続でも扶養に入れることができる
在職中に配偶者や子どもなどを扶養に入れていた場合には、任意継続でも扶養に入れることができます。国民健康保険に扶養の仕組みがなく、保険料が世帯の人数によって変わる(均等割の部分)こととの大きな違いです。
非自発的失業者の場合は国民健康保険の軽減がある
解雇や雇止め、退職勧奨に基づく退職など、いわゆる「会社都合」の退職の場合、国民健康保険料を算定する際の前年度所得を 30/100 だったとみなして計算されます。
離職日の翌日の属する月から、その月(離職日の翌日の属する月)の属する年度の翌年度末までが対象となるので、例えば2019年12月末で退職した場合、2020年1月から3月までの保険料(2019年度)と、2020年4月から2021年3月まで(2020年度)の保険料の計算時にこの軽減措置が適用されることになります。
さらに、保険料の均等割額と平等割額の軽減(法定軽減)の判定も 30/100 で計算された結果で行われるので、退職前の給与が500万円程度であっても、保険料の2割軽減が認められる可能性があります(家族構成にもよるので一概には言えませんが)。厚生労働省の試算(PDF)なども参考にしてみてください。
低所得者の保険料の軽減は特に申請しなくても自動的に適用されますが、非自発的失業者に対する軽減措置の適用を受けるには、別途申請が必要です。また、申請には雇用保険受給資格者証が必要です。雇用保険受給資格者証が受け取れるのは、ハローワークで求職申し込みをしてから数週間後に行われる雇用保険受給者初回説明会のときなので、国民健康保険の資格取得届出の期限に間に合いません。後から申請しても遡って適用されるようなので、試算して国民健康保険のほうが保険料が安そうであれば、先に資格取得の届出をしてしまいましょう。
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